「社長から、『将来的に店舗を譲渡してあげるから』と言われたので入社しました。」
「・・・なのに、入社から3年以上経った今も、店舗を承継できそうな様子が全然なくて。」
私が開業支援のアドバイザーになってから、
このようなご相談を受けたことは1度や2度ではありません。
お話を伺うたびに心が痛みます。
冒頭のようにおっしゃる薬局は、薬剤師採用に大変苦労されている先が多い印象です。
現在の人員不足を解消するために、
開業希望のある薬剤師の心をくすぐり、入社へと導く・・・
皆さまのお話をいろいろ伺うと、ついそんな見方をしてしまいます。
開業希望薬剤師の心中を思うと、
故意か否かに関わらずあまり良い話ではありませんし、
私たちアドバイザーは、せめて弊社が関わる案件では、
このような結果にならないよう、細心の注意をはらっています。
ただ、一方で、本当に数年後には薬剤師に譲ってあげたい、
という想いをお持ちの経営者さまが沢山いらっしゃることも事実です。
「社長や患者さまの手前、まずは社員として馴染んでもらってから譲りたい」
「薬局への投資金額があと2年で回収できるので、3年後以降に譲りたい」
このように、「譲渡を先にしたい理由」が明確な法人さまの場合、
一旦入社⇒数年後譲渡いただく、というのは方法のひとつです。
では、そのような流れで進める場合、どのような点に注意したらよいのでしょうか?
「正解」はありませんが、私は以下の2点を、ひとつのポイントにしています。
・事前に、レセコンデータや損益計算書など、薬局運営に関する資料を出してくださるか
・入社前に、将来的な譲渡契約書もしくは譲渡に関する覚書をご締結いただけるか
このような対応をしていただけるかどうかで、
法人側の「本気度」を推し測ることができますし、
データの確認は「本当に将来譲り受けたい店舗なのか」を判断する材料にもなります。
もちろん、本当に譲る気持ちがあっても、何らかの理由で資料が出せない、
契約書や覚書は結べない、というケースもあります。
ただ、何の保証もない状況で案件を進めると、思うように話が進捗しない、
また、採算性が想定と大きく異なるといった場合もあるため、より注意が必要です。
そもそも、月日が経てば人の気持ちも状況も変わるものなので、
「将来的な譲渡」は不確実性が高い、ということを理解した上で話を進める、
または、できる限り早いタイミングでの譲渡の可能性を探っていただく、
という心構えも必要かもしれません。