国民が安心して暮らす上で、皆保険制度はなくてはならないものです。
しかし、このまま少子・高齢化が進むと、
「いつか制度を続けられなくなるのでは」という懸念もあります。
万が一にも制度が破綻すれば、先生方の収入や働き方に大きな影響が及ぶのは言うまでもありません。
皆保険制度を維持するため、また財政健全化の目標を達成するために、
制度の改革が着々と進んでいます。
改革の多くは、患者の負担を重くし、制度の運用に必要な公費・保険料を減らすものです。
その一つが、高齢患者の所得水準に合わせた「高額療養費制度」の見直しです。
高額療養費制度は、
患者が1カ月間に負担する医療費が高くなり過ぎないように、限度額を設ける仕組みです。
患者が70歳以上の場合、医療費全体の限度額とは別に、
特例として外来医療費の限度額が設定されています。
今回の制度改革では、所得水準が現役並みの場合の外来医療費の限度額が、
8月から1万円以上アップします。さらに、そうした患者は、来年8月以降、
外来医療費の限度額を設ける特例を使えなくなります。
もちろん、医療費全体の限度額はありますが、所得水準に合わせる形で再設定されるので、
限度額が数倍になる人も現れます。
また、所得水準が現役並みに高くなくても、住民税の課税対象となる場合、
外来医療費の限度額などが段階的に引き上げられます。
(住民税が非課税の場合、限度額は維持されます)。
加えて、医療療養病床に入院する65歳以上の患者の自己負担が
引き上げられるなど、「入院時生活療養費制度」も段階的に見直されます。
ここまでに紹介した制度改革は、患者の負担を増やすものです。
一方で、医療費の伸びを抑えるための改革も進んでいます。
象徴的なのは、2016年11月に決まった高額薬剤「オプジーボ」の緊急的な薬価改定で、
いきなり半額になりました。
政府は、同剤の薬価引き下げにとどまらず、薬価制度自体の抜本的な改革に乗り出す方針です。
背景には、革新的な新薬が次々と登場する中、
従来のルールで高い薬価を付け続ければ医療費が膨れ上がり、
皆保険制度をパンクさせるという懸念があります。
ただ、医療費を膨らませる要因は、薬価だけではありません。
薬価制度の改革でパンクの懸念が払しょくできない場合、
次は何がターゲットになるのか、とても気になるところです。