オプジーボは、免疫機能を高めることで、がん細胞を攻撃する画期的な治療薬ですが、 患者一人当たり年間約3,500万円かかると言われています。
なぜ、これほどまでに高い薬価が付いているのでしょうか?
それは、薬の値段を決める国の制度上の問題があります。
当初、オプジーボは「根治切除不能な悪性黒色腫」の
治療薬として、公的医療保険の対象となりました。
薬を製造した小野薬品工業は、患者数を470人と見込んだため、
国は患者数に対する製造のコストを勘案し、高い値段を付けたのです。
ところが、昨年末に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」が
効能・効果に加わったことで、対象患者数が最大1.5万人に増加。
小野薬品工業は薬価収載時、
ピーク時の売上高を31億円と推計していましたが、
昨年度の売上高は212億円に達し、今年度は1,260億円を見込んでいます。
年間販売額が予想を大きく上回る場合、
通常は2年に1度の診療報酬改定で薬価が見直されますが、
オプジーボの適応拡大は昨年末だったため、秋に行う市場調査に間に合わず、
今年4月の改定の対象から外れました。
8月下旬には、「根治切除不能または転移性の腎細胞がん」に適応が広がり、
現在、他の13種類のがんで臨床試験(治験)が進んでいます。
また先月末には、競合となるがん治療薬「キイトルーダ」(MSD)が製造販売承認を取得。
類似薬の価格は、先行承認された薬を参考に決めるため、
医療費がさらに膨らむことが懸念されています。
医療費の値付けを行う中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)では、
年間販売額が予想を大きく上回った場合、薬価が最大半額になる現行のルールで
特例的に薬価を引き下げる方向で議論が進んでいます。
仮に、小野薬品工業が公表している1260億円という数字を基に
薬価を引き下げる場合、下げ幅は最大25%となりますが、
政府の経済財政諮問会議では、薬価を半額以下にするよう求める声もあります。
英国と米国のオプジーボの薬価は、日本の半分以下となっており、
日本もそれに合わせるように要望しているのです。
引き下げ幅は年内に決まる見通しです。国の財政がひっ迫する中、社会保障費を削減するため、
国がどこまで切り込むのか注目が集まります。