良質かつ適切な医療を行うために
厚生労働省は、第67回社会保障審議会医療部会で提示された
「医療を取り巻く状況の変化等を踏まえた医師法の応召義務の解釈に関する研究について」
の報告を発表しました。
資料(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000210433_00005.html)
この報告を受けて応召義務があっても診療しないことが正当化される考え方・事例をなどを整理し、
現代における医療提供やの在り方や医師の勤務環境の等も踏まえ、
あらためて応召義務についての解釈通知を全国的に示す予定です。
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◆応召義務とは
医師法第19条に、医師の診療についての義務が規定されており、診療に従事する医師は、
正当な事由がなければ患者からの診療の求めを拒んではならないとされています。
これがいわゆる医師の応召義務の根拠となっています。
参考:
医師法第19条
診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、
これを拒んではならない。
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報告書では、診療しない事の正当化において
「患者に対して緊急対応が必要か否か」と「診療時間内・勤務時間内であるか」
を重要な要素として整理を行い、診療を行わない個別の事例についても説明をしています。
◆診察しないことが正当化される事例の整理
(緊急対応が必要/診療時間内・勤務時間内)
事実上診療が不可能といえる場合にのみ、診療しないことが正当化される。
(緊急対応が必要/診療時間外・勤務時間外)
医の倫理上、応急的に必要な処置をとるべきとされるが、
原則、公法上・私法上の責任に問われることはないと考えられる。
(緊急対応が不要/診療時間内・勤務時間内)
原則として、患者の求めに応じて必要な医療を提供する必要あり。
ただし、緊急対応の必要があるケースに比べて、正当化される場合は緩やかに(広く)解釈される。
(緊急対応が不要/診療時間外・勤務時間外)
即座に対応する必要はなく、診療しないことに問題はない。
時間内の受診依頼、他の診察可能な診療所・病院などの紹介等の対応をとることが望ましい。
◆診察をしない個別事例
・患者の迷惑行為
・医療費不払い
・入院患者の退院や他の医療機関の紹介・転院など
・差別的な取扱い
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医師の働き方改革検討会でも
「医師が無制限に働き続けなければいけないということは、応召義務は想定していない」
という見解がすでに提示されていますが、
やはり急性期や医療過疎地での過重労働はたびたび話題に上がり、
働く医師の心身に支障をきたしてしまうケースも少なくありません。
私がこれまでにお手伝いをさせていただいた先生の例でいえば、
地域医療への貢献のため、町唯一の医療機関で診察を行なっていたものの、
夜間や休日にもご自宅に患者が訪れる状況が続き、ご家族が体調を崩されてしまった、
という事例もありました。
結果先生は退職する事となり、町は唯一の医師を失うことになってしましました。
一方で応召義務をモチベーションとして診療に取り組んでいる先生も多く、
非常に難しい問題です。
応召義務の解釈通知については秋頃になると言われていますので、
今後も注目して見ていきたいと思います。