■A医師のケース(研修医 ⇒ 保健所勤務)
大学の医局派遣で内科医として様々な経験を積まれる中、
研修医4年目に在籍をした急性期病院での激務で精神的、体力的に疲れていらっしゃいました。
元々専門的な医療より「病気の予防や健康づくり」などに興味をもっていたこともあり、
退局を決心。保健所の公衆衛生医に転職をされました。
当初は臨床を離れた事に「これでよかったのか」と考えることもあったそうですが、
現在はご自身の興味のある分野を更に深めようと、
認定産業医の資格を取得し、産業医への転職を検討されています。
このように、医師の選択肢は臨床だけではなく、
その働き方や活躍の場は多様化してきています。
今回は、「医師の臨床以外の選択肢」について、
代表的なものをご紹介します。
◆基礎研究職◆
医師免許取得後、助教、講師、准教授、教授、といった形で大学に在籍し、
将来の医学の発展のために研究を行います。
完全に臨床から離れるわけではなく、大学病院で診療を行う方もたくさんいらっしゃいます。
また、臨床医に比べて年収は低めと言われており、
関連病院などでアルバイトを行う医師も多いようです。
◆老健施設長◆
介護老人保健施設の施設長は都道府県知事の特別な許可がない限り、
常勤医師がつとめることになっています。
主な業務は入所者、通所者の健康管理で、
症状の急変などの事態には提携医療機関への紹介で対応します。
そのため高度な医療技術よりも、豊富な経験やコミュニケーション能力を求められます。
70代以上の医師が施設長を務めることも少なくなく、
臨床で定年を迎えた医師が希望する転職先としても人気です。
1施設に1名の募集がほとんどですので、求人競争率は高めです。
◆公衆衛生医師◆
自治体の保健所に所属し、保健衛生に関する施策や事業の企画、実施を担います。
その他、健診の実施や環境衛生、食品衛生に関する医学的評価や判断など、
地域全体の健康づくりのため、行政の職員として多岐にわたる業務を行います。
公衆衛生医師は地方公務員ですが、国家公務員の場合は「医系技官」といい、
更に大きな枠で国全体の医療に関する施策やシステム作りに携わります。
◆産業医◆
一般企業において、労働者が健康で快適な環境の元で仕事が行えるよう、
医師の立場から指導・助言を行います。
主な業務は、健康診断やストレスチェック、
労働者の健康障害の原因の調査や対策などがありますが、
所属する企業の業種や規模によっても内容が変わります。
人気の求人ですが、応募の際には業務内容や勤務条件を
よく確認されたほうがよいでしょう。
◆生命保険社医◆
生命保険会社に勤務し、生命保険加入希望者の引き受け審査や
支払い発生時の審査を行います。
9~17時の勤務、週休2日の勤務形態が多く、
仕事と家庭の両立を求める医師に人気の転職先ですが、
全国転勤が条件となる事もありますので注意が必要です。
年収は決して高くはなく、1,200万円程度が多い印象です。
◆製薬会社・医療機器勤務◆
新薬や医療機器の開発、臨床試験に参加し、
基礎研究とは別の分野で医療の発展に貢献します。
週4日勤務や在宅勤務、厚い福利厚生など安定した働き方ができると言われていますし、
企業によっては勤務医の年収と同じかそれ以上の待遇のところもあります。
ただし、企業の規模や業種によって求められる内容が大きく異なるため、
相性や業務内容の振り幅が大きいかもしれません。
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その他にも海外で活躍する方や、
病院経営のコンサルや新しい医療サービスを始める方など、
臨床以外の選択肢は多岐に渡ります。
ただし、上記の産業医や保険社医などの求人は、
一般の医療機関の求人に比べて圧倒的に数が少なく、
希望する医師も多いため非常に狭き門です。
内定を獲得するためには医療機関の選考と違った準備、心構えが必要になります。
一方で、本当に臨床から離れてしまってよいのか、と悩まれる方もいるでしょう。
一度臨床の現場から離れてしまうと、
後々戻りたくなっても相当の苦労が必要になりますし、
確実に選択肢は少なくなってしまいます。
キャリアチェンジを検討しされている方、また転職で悩まれている方は、
ぜひ弊社のキャリアアドバイザーにご相談ください。
一緒にこれまでのキャリアの棚卸を行い、ベストな転職先はどこなのか、
または現在の職場に残るべきなのか、一緒に考えさせていただきます。