医師は弱い立場の患者と家族に向き合い寄り添う仕事、でも・・・
私たちは普段から、様々なお考えの先生にお目にかかります。
中には、強い使命感や正義感を持ち、患者への思いが人一倍強い先生も沢山おられ、
いつも尊敬の念を抱いています。
ところがそのような先生方から、
勤務先で、「患者のために、地域のために、周囲の職員のために」と考え行動したことが、
経営側(院長・理事長)に納得してもらえなかった、というお話を伺います。
内容は様々ですが、病院の体制に不満を感じ、
「もっと患者のためにうまく回るように」と、
現場の声を経営側に伝えたのに理解を得ることができない、といったことも多いようです。
そしてこのようなケースは、
内科系の先生より、外科系の先生に多いように感じます。
理由は、恐らく、内科系はひとりの医師の診療である程度完結しますが、
手術が絡む外科系は、術前から術後、退院や転院までの一連の中で他の職種の方が絡むため、
自分ひとりでは管理ができない分、病院の組織や体制に敏感になり、
結果としてご不満につながるのでは、と思います。
ここまで読んでくださった方は、
きっと、「患者のために組織改革に声を上げるヒーロー」のような
イメージをお持ちになるかもしれません。
でも、なぜかこのような先生方は、
今までのご転籍先で、経営側(理事長や院長、事務長)と衝突をしてしまっていたり、
結果的に、「経営者に理解してもらえない」と退職を決断をされているケースさえあったりします。
患者思いの先生、なのになぜこのようなことになるのでしょうか?
それは、「すべては患者のために!」から湧き出る不満の改善が、
経営的な視点からは実行が難しい、そんなケースで起こることが多いようです。
国民皆保険が維持できるかどうかの岐路に立つ現状においては、
医療費削減を前提とした診療報酬の改定が続いており、
病院・医院の経営自体が非常に難しくなっています。
生き残ることができず病院が潰れていく、そんな淘汰の時代に入りました。
適性で健全な経営ができない医療機関は今後の存続が危ぶまれる今だからこそ、
「地域のために、患者のために」と思いながらも、
なかなか実行に踏み切れないことがあるのは事実です。
とりわけ、医療機器の導入や人の採用などを含め、
費用を要するものについては医療機関側も慎重にならざるを得ません。
「患者の要望を聞きすぎると、病院経営が成り立たなくなる・・・」
そんな嘆きにも似た本音を経営者の方から伺うこともあります。
一方で、時々、経営を重視しているイメージのある病院へのご転籍に
気持ちが進まない先生にお目にかかる機会があります。
お気持ちはわかりますが、これらの現状を踏まえると、
患者重視の気持ちはもちろん持ちつつも、
周りの意見を尊重し経営にも協力していく姿勢が必要であり、
そのようなバランスが取れた医師が、今後、
より求められていくようになると思います。
患者への思いの強い、使命感にあふれた先生は、当然患者からのウケはとても良いです。
しかしながら、その思いが強すぎるが故に、
経営的な視点がすっぽり抜けてしまうこともあるようです。
病院の収支状況、ご自身の診療科の売上、ご自身を含む医師のパフォーマンス、
そのためにかかるコストなどを把握すると、
恐らく医療経営も大変であることがお分かりになると思います。
また、今年4月の厚生労働省医師需給分科会の資料によると、
2028年には医師の供給が需要を上回り、
医師も余剰が出る時代が到来するという推計が出ています。
その時に選ばれる医師には、
当然のことながら必要とされる経験や手技・資格と併せて、
「経営的目線」が求められるのかもしれません。